★思い出の紀行(韓国)<3チャガルチ市場へ1

 我々一行は、釜山の台所を預かると言われているチヤガルチ市場に向かった。
龍頭山公園の南に位置する釜山港の入江沿いに、東西に300㍍ほど続く魚市場である。
道路沿いには、魚市場特有の臭いと共に延々と露店が続き、近海産の魚介類や干物など所狭しと列べられ、おばさん達の威勢がいい。韓国語でおばさんのことをアジュマと言うらしいが、ここはまさにアジュマ達の職場である。その一角に日よけのためビーチパラソルの立てられた露店があったが、ここまでくれば違和感もなく何でも有りの感がする。

チヤガルチ市場の市場ビルに入ると、3~4坪ごとに陣取られた鮮魚の店がギツシリと建ち並び、その数はおよそ200軒以上あると言う。
水槽や皿に盛られた魚介類を注文すると、その場で刺身にしてくれ、客は簡易に作られたテーブルで食べられる仕組みになっている。
我々は、タコの生き造りを注文した。ニンニクのみじん切りにまぶされ小さくぶつ切りにされたタコは、まだ動めいている。ほおばると口の中で吸盤があちこちに吸い付く。噛まずに舌で遊ばせて食すると言う事であったが、時たま痛いほどである。
韓国の醤油は、日本に比べ若干甘い感じがしたが、同行の一人は日本より小さな刺身醤油を持参して来ていた。
タコの盛り皿とビール5本で、日本円で三千円弱と言う安さである。また、市場ビルの階上は食堂になっており、売場で買った物を調理してくれると言うことであった。
黒潮とリマン寒流がほどこす豊富な食材は古来より韓国の食文化を支えてきた。今夜の海鮮料理が楽しみである。
市場ビルを抜け裏手に出ると、港には大型漁船や小舟が漂い、間近には影島の街並みが見えていた。

 チヤガルチ市場を後にした我々は、ひとまず二泊する予定のロッテホテルで夕食まで骨休めすることになった。
釜山の繁華街の西側に位置するロッテホテルは、釜山で最大規模の収容数(900室)を誇る43階建の地上173㍍の高層ビルであり、龍頭山公園の釜山タワーとほとんど変わらない高さである。14階から39階までが客室になっており、私の22階の部屋からは釜山市街が一望できた。
屋上展望台、飲食施設、スポーツ施設、屋内プール、インドアゴルフ練習場、毎日行われているシアターレストランのラスベガスシヨー。また隣接するロッテ百貨店の巨大スペースを利用した屋内遊園地、スカイプラザなど、まさにロツテワールドの世界と言うことであったが、過密スケジユールのためほとんど利用できなかった。

 韓国最初の夜の会食は、海鮮料理であった。
チャガルチ市場より南に下る南海に突き出た岩南洞の付け根に、松島と言う海水浴場があり、その海岸線に沿うように刺身料理を食べさせる店が数十軒建ち並んでいる。その一角の二階に我々は通された。
夜のとばりのおりた海岸は、対岸のネオンが海面を染め揺らいでいる。何故かほっとするぬくもりである。

すでに、長テーブルには料理がセットされ、タイやヒラメや小皿に盛られた数々の料理が列べられている。歌や踊りがあればまさに竜宮城だ!
座敷はオンドル部屋になっており、耐熱シートが張られてほかほかと温かい。オンドルは、今で言う床暖房システムである。寒さの厳しい地域に住む韓国人の知恵であろうか、高麗時代からすでにあった伝えられ、かまどの熱を部屋の床下を通し煙突から吐き出すことによって部屋を暖める方式である。
現在でも韓国には、一般家庭でもオンドルパンと呼ばれる床暖房の部屋があると聞く。燃料は練炭が使用され、かっては一家全員が寝ている間に一酸化炭素中毒で亡くなる事も度々あつたと言う。
現在では、床下にスチームパイプを通したガスボイラー方式に変わり事故は少なくなったとは言われているが、まだまだ練炭を使用している所もあり、練炭を山積みにして走るトラツクは、韓国の冬の風物の一つになっていると言う。

昔、オンドルパンでは、色鮮やかな民俗衣装であるチマチヨゴリをまとった妓生(キーセン)と呼ばれる芸妓が唄や踊りでもてなす華やかな宴が行われていたと言うことであったが、現在ではあまり行われていないと言うことである。
妓生の宴のルーツは、新羅時代までさかのぼるとされているが、本格的には高麗時代からであり、一般的には没落した家柄や貧しい生まれの人々が妓生となり唄や舞を売り物にしていたと言われ、常人(サンイン)より身分の高い官婢であり、地方の官衛、両班たちの宴席にはべりもてなしたと言われている。


現在では、その風習は松島の近くの緑町あたりに残っていると言うことであり、チマチョゴリをまとい片膝を立てて座る姿は、なまめかしい限りであると言うことである。
チマチヨゴリは、一般的には正月や祝いの席で着るだけだと言うから、日本の和服みたいなものであろう。韓国の女性は必ず一着は持っているい言うことである。観光客用のチマチヨゴリの店もあり、オーダーすれば寸法を測り帰国までには仕上げてくれると言う。


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2018年05月25日